根拠の無い思いこみに注意
以前、ある業種の方から「リスティング広告をうちの会社でも導入したいんだけど」とご相談をいただいた時の話です。
事業を始めてから今まではあまりウェブサイトからの集客を行っていなかったのですが、ウェブサイトのリニューアルを機に、リスティング広告を導入したいとの事。
実は以前、その業種のリスティング広告の運用をやっていた事もあったので、その経験を元とした傾向などはある程度把握していましたし、現状、競合他社が十数社、リスティング広告に力を入れているところも7、8社あるため、そういった状況も踏まえてお話をしようと考えていました。
お会いしてリスティング広告のことをまずは一から話しはじめ、時間配信や曜日配信などが出来る事を説明すると、
「ウチのお客さんは昼間に検索なんてしないよ。夕方の6時~夜中の1時くらいまででいいよ」
「夜でも平日はほとんど検索なんてしないだろうなぁ・・・。金曜の夜から土、日、月だけの広告配信でいいんじゃないかな」
とおっしゃいました。
先ほども書いたとおり、私が以前その業種のリスティング広告をやっていた時は、夜間にアクセスが多いなんて事も特別なかったですし、平日の日中だってきちんとアクセスもあり、コンバージョンも獲得出来ていました。
っていうか、どちらかと言うと、土日のほうがアクセス数が下がっていて、コンバージョンも平日のほうがより多く獲得出来ていたのですが・・・。
でも、同じ業種だからと言ってそのデータが100%当てはまるとも言い切れません。
もしかしたら、その方のウェブサイトではそういった傾向があるのかもしれないと思い、
「アクセス解析のデータは見てらっしゃるんですか?」とご質問すると、
「え?そんなの見てないよ」との事。
「ではなぜ、お客様は夜間や土日にウェブサイトを見ると思われるのですか?」とさらに質問すると、
「だって、うちのお客さんはみんな働いている人だよ?平日の昼間なんて見れる訳ないじゃん。」とのご返答。
う~ん、困った。
もちろん時間配信など、そういった広告配信をご希望されるのであれば、そのご要望には応えるつもりですが、広告の成果が出ないかもしれない事を、そのままにしておくのもよくありません。
なので、以前同じような業種を扱った事がある事、その時は平日の昼間でもきちんとコンバージョンを獲得している事、土日や夜間にアクセスが増えるわけではなかった事など、一つ一つ説明しましたが、「週末の夜間だけしかアクセスされない!」の一点張り。
この話は極端な例かもしれませんが、こういった事ってどの業界にも少なからずありますよね。
「Googleはウチの業界向きじゃない」とか、「スマートフォンはウチの業界向きじゃない」とか。
一度やった事があって、その結果、そういう結論に達したというのであれば、まだわかりますが、やる前からそのように決めつけてしまうのは、機会損失を生む原因となるので非常にもったいない事だと思います。
実際にリスティング広告を運用してみると、「この時間帯がコンバージョン率が高いのか」とか「月曜日にコンバージョンが増えるのか」というように、所謂”意外な発見”を見つける事が多々ありますよね。
そうやって出てきた結果から、「この時間帯にコンバージョン率が高くなるのはなぜなのか」、「月曜日にコンバージョンが増えるというのはどういう意味なのか」と、ユーザーを想像していく事が出来ます。
そうすると、リスティング広告の戦略を強化する事が出来、パフォーマンスを上げていく事が出来ると同時に、お客様の行動を知ることが出来るため、リスティング広告以外のマーケティング活動でも活用する事が出来ますよね。
そういったリスティング広告以外の事も含めて、偏った思い込みをしてしまう事による損失というのは、大きいのではないかと思います。
「思い込み」が必ずしも悪いとは言いませんし、最初の段階できちんと仮説を立てて、その仮説に合わせた施策をしていく事は非常に大切なのですが、あまり根拠の無い、偏った思い込みというのは、思っている以上に損失が大きいので、そういう思い込みがあるな、と感じている方は一度見直してみると良いと思います。
また、自分では”根拠の無い”思い込みだと気が付かないという事もよくありますので、そういった時は他業種の方と意見交換をして、別の視点からの意見を聞いてみるのも、とても参考になると思いますよ。
株式会社アイエムシー 大塚雅智